斜面と土

斜面と土 01

 計画地は長崎県・島原半島の一角にある。半島の中心にある雲仙普賢岳から放射状にのびる山と谷が敷地付近で連続しており、その山側に位置する平坦な敷地であった。この敷地の履歴を調べると、1980年代頃まではこの小山のような形状を活かした果樹の段々畑が形成されていた。やがて1990年代以降に尾根に沿って道路が敷設され、そこに接道する形で平らな地面となるよう盛土され、現在の状態に至ったようである。敷地そのものは平坦ではあるものの、少し広域でみるとなだらかな斜面地の一角に位置していることを日々の往来で体感するのである。本来の斜面と、そこに誰かが後から平らに盛った土。そこから人がこの地に住まうことを考えられないだろうか。

 この住宅は、山から海に向かって土に沈んでいくような形をしている。かつての果樹畑だった頃の斜面に沿うように、つまり現在の道路とほぼ同じ傾きで断面を決定した結果である。土に沈んでいった海側の室内は盛土に包まれた半地下状の構成となり、動物が棲む穴ぐらのような眠る場所となっている。一方、山側は雲仙普賢岳に向かって登っていき、土から開放された明るい場所となり、目下に広がる諫早湾や多良山系を望むことができる。ここを家族が憩うような場とした。本来の斜面から生まれるアクティビティを日々の暮らしの中で感じながら、後から盛られた土とも共存していくような住まいである。

 構造は木造平屋建てである。長手の平面基準を2,275mmスパン、屋根梁や壁・天井・スラスト止めを910mmスパンとし、崖側の開口部は全て同幅で高さを200mmずつ変化させている。それらが住まい全体をとおして一定のリズムを与えることで、本来の斜面の変異と体験が際立つような計画とした。近年の工事費高騰を受けて各材料の歩留まりを尺寸法で追求した結果でもある。また地質調査を行ったところ、かつての斜面に沿って支持地盤があることが分かった。基礎もこの傾きに沿うように掘り下げ、支持地盤と基礎を近接させることで基礎計画の最適化を図っている。

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